ハマの海づくり 5

流域のネットワーク

 今まさに台風シーズンだが、アスファルトに固められた街に大雨が降ると、ハマの海はえらい事になる。
 一気に水かさを増した川からはおびただしいゴミが吐き出され、雨水を分離できない古い世代の下水道はパンク寸前となり、処理場の手前で未処理の汚水が海にたれ流される。
 台風一過、ボランティアがいつくしみを込めて清掃したばかりの横浜唯一の自然海岸・野島の砂浜が、大量のゴミに埋まり汚物にまみれている。高い秋空の下、何度無力感にさいなまれてきた事だろう。
「海づくり」は海だけでがんばってもダメなのだ。

 その事に気づいた10年前から、流域ぐるみで海をよくしなければと考えるようになった。野島周辺には4本の河川が流れ込み、その全てが一旦平潟湾に集まる。川の長さは最大でも3キロあまり。ゆっくり歩いても、半日あれば海から源流まで行けるコンパクトな流域だ。しかもそのほとんどが金沢区という行政区画に収まっている。ネットワーク形成には適切な規模と条件である。
 さらに恵まれていたのは、川、干潟、森、街といった環境にそれぞれ向き合う熱心な市民団体が既に活動していたことだ。団体間をつなげるキーワードは「水」。心に水の軸線を共有しつつ手を結び合うのに、時間はかからなかった。
 「ふるさと侍従川に親しむ会」、「金沢野鳥クラブ」、「横浜自然観察の森」、「金沢街づくりの会」、「金澤地域総合研究集団」、「ガールスカウト第53団」、「ナチュラルコープ」等が、それぞれの活動現場から水に従って流れ下ると、最後に野島にたどり着く。
 1994年の秋の1日、第1回「金沢水の日」が開催された。各団体が流域内各地で同時多発的にイベントを興し、水の流れのままに動いてメイン会場の野島青少年研修センターに集結、午後には海岸で数百人規模の清掃を行って「水の日宣言」を読み上げた。
 以来「金沢水の日」は毎年続いて、今年は1012日(日)に記念すべき第10回が開催される。身近な水環境と市民のネットワークを五感で体験できる野島公園内の会場に、是非足を運んでいただきたい。


海をつくる会  工藤 孝浩