ハマの海づくり 11

アマモの種まき

  

 11月1〜3日の3連休に、金沢漁港を作業拠点として野島海岸と海の公園の地先における海草アマモの種まきが行われた。
 これは、「海のゆりかご」であるアマモ場を再生させるため神奈川県水産総合研究所(水総研)が水産庁から委託を受けた、水産の世界では全国初となる市民との協働事業である。
 種子は、今年5月に横須賀市走水の天然藻場から摘み取った花を水総研の屋外池で育て、人工的に生産したものだ。花摘みと池からの種子の取り上げという多くの人手を要する作業には、市民参加が導入された。今年の種づくりには、既に延べ100名を超える市民が参加している。
 こうした市民参加の仕組みを整え、参加を呼びかけ、現場を仕切るのが「金沢-東京湾アマモ場再生会議」である。この団体には、海の環境再生を志向するNPO、一般市民、企業、漁業・遊漁船業者、大学、研究機関、行政という幅広い分野の方々が結集している。
 同会は、今回の種まきに向けて、2度にわたる市民向けのアマモ勉強会を行い、地域の学校に出向いて参加呼びかけを行った。県だけでは成しえないであろうきめ細やかな市民参加と協働を具現化させている実行部隊なのである。
 
 3日間の作業のうち、初日は種子を生育に適した海底に一定期間保持させるための生分解性のシート作成と、そこに特殊な糊で種子をはり付ける作業だった。誰にでもできる作業であることから、この日には近隣小学校の児童・教諭と保護者約30名が参加した。各自が製作したシートには手書きの名札が掛けられ、アマモのすこやかな生長への想いが託された。
 2日目以降は、シートの海底への設置と別な方法による海底への種まきが行われた。この作業には、水総研から委託されたNPO法人の潜水士があたり、職業ダイバー顔負けの働きぶりで、計画どおりに作業を遂行した。
 水産庁はこの事業で、行政と一部企業の手の中にある藻場造成事業が、市民や漁業者にも担えるものになるかどうかを判断する。将来の市民による日本の海づくりの試金石ともいえる斬新な社会実験が、ハマの海を舞台に進行中なのである。

海をつくる会  工藤 孝浩