ハマの海づくり 17

物質循環を担う

  ハマの海には、日々川や下水道を通じて、または直接海面からゴミや様々なモノが流れ込んでおり、残念ながらゴミ溜めの様に思われている。しかし、50年ほど前までは、鶴見や本牧でも海水浴や潮干狩りが楽しめる「きれいな海」だった。

そもそも自然界には、「物質循環」という仕組みが働いており、陸から海に流入する物質には再び陸に戻ったり外洋に出たりする経路がある。そして、50年前までは流入量と出ていく量とがつり合って「きれいな海」が保たれていた。

ところが、我々の生活水準の向上と人口増加が、海をゴミ溜めの様にしてしまった。飽食とエネルギー浪費とを重ねた人間社会からの老廃物、すなわち大量の生活廃水やゴミ、さらには有害物質までもが垂れ流され、それらの量が物質循環という自然界の調整力を逸脱してしまったのである。

海から陸への物質循環の主な担い手は鳥であった。干潟で餌をとるシギ・チドリ類、海上で魚などをとるカモメ類などは、海から多くの有機物を取り上げる。また干潟では、何数種もの微生物の共同作業によって窒素化合物が窒素ガスへと変えられて大気へ放出される。現在稼動中の下水処理場などより優れた水の浄化力をもつ。

鳥も干潟も激減してしまった今、海から「モノ」を取り上げることができる一部の人間が、物質循環の担い手として重要な役割を果たしている。

海をつくる会は、23年間にわたって海に潜り、ゴミを拾い続けている。プラスチックなどの難分解性のゴミは、ひとたび海底に沈んでしまうと、人間が拾い上げない限りなくなる事はない。海に負荷をかけっ放しの人間の中で、これができる数少ない者としての自負が我々にはある。

あと、釣りや潮干狩りを楽しむ人々も、獲物を海から取り上げる事により、意図せずに物質循環を担っているわけである。そして、海から陸への物質循環を生業とする貴重な存在が、前々回のノリでも触れたとおり漁業者である。

 釣りや潮干狩りなどのレジャーや漁業を盛んにすることが、物質循環を正常化して、きれいな海を取り戻す有力な手段になる。
海をつくる会 工藤孝浩


横浜の海は今でも優良な漁場であり、漁業者は重要な物質循環の担い手である

(ベイブリッジ沖にて、 筆者撮影)