ハマの海づくり 18

磯の香り

『横浜』の名の由来には@「かつて海を横切るように突き出た細長い砂浜だったことから海を横切る浜すなわち〔横浜〕となった」A「浜の余戸(ヨゴ)が訛った。」B「浜の横、つまり浜のそばにある村から由来。」という三つの説があり @の説が一般的に言われている名の由来で半島状の砂州が横に長くのびた地形をしていたそうだ。横浜の砂州埋立工事は江戸時代から進められ 横浜港が開港したのは 1859年(安政6年)。以降150年埋立ては続き 歌川広重の作による金沢八景を題材とした浮世絵「州崎晴嵐」「瀬戸秋月」「小泉夜雨」「乙艫帰帆」「称名晩鐘」「平潟落雁」「野島夕照」「内川暮」に描かれている絶景なる風景は、垣間見ることすら出来ない。 2004年 現在 横浜の海岸線は完璧に護岸と変わり 140KMの海岸線のうち、人工海浜である「海の公園」と その横にある自然海浜の「野島」だけに砂浜がある。野島の浜はわずか300Mに満たない。毎月、海をつくる会では「野島定点観察」を実施し、砂浜の簡易清掃・アサリ稚貝観察・アマモ植栽・育成観察などを行っていますが 私はこの野島に来ると 心が休まり、精神的にも安定し、大好きな場所の一つです。そのわけは 野島には「磯の香り」があります。「磯の香り」は言い換えると「磯臭さ」であり イメージを壊すつもりはありませんが、海洋プランクトンが死後分解し、海藻類などが浜へ打ち上げられ分解し発する匂いです。横浜で磯の匂いを嗅ぐ事ができる唯一の場所と言え、貴重な香りといえるでしょう。

海をつくる会は 131日 野島研修センターで「野島の海 自然観察ガイドブックA」の発刊式を行います。会としては3冊目となる冊子ですが (財)日本科学協会 「水域環境をめぐる学習活動等の成果公表支援事業」を受け発刊いたします。是非31日 私達の野島に対する熱い思いと 100年の時を超え 歌川広重が嗅いだと思われる同じ磯の香りを胸一杯吸いに 金沢八景 野島公園内野島研修センターへお越しになりませんか。

海をつくる会 事務局長 坂本昭夫


参考資料:小学館「日本地名大百科」199612月・宮野力哉「美術の中の横浜」19946

「余戸」大宝律令で50戸を里とし、それに満たない村落制度を指す単位

図:『横浜は 突き出た細長い砂浜だった。』
横浜市中央図書館所蔵

  「横浜税関沿革史付図、横浜開港見分図(安政
6年)」