ハマの海づくり 19

自然再生推進法

 新年を迎え、海をつくる会のメンバーは、ハマの海を良くするための誓いを新たにしている。当連載の根幹は、我々がもつ海の現場からの視点と思考の紹介、すなわちボトムアップ型の情報発信だが、今回はトップダウン型の視点から2003年を振り返りたい。

最も大きな出来事は、11日の自然再生推進法の施行だろう。満1歳を迎えたこの法律の目的には、「自然再生に関する施策を総合的に定め」、「生物の多様性の確保を通じて自然と共生する社会の実現を図り」、「地球環境の保全に寄与する」と、自然を巡る今日的キーワードがちりばめられている。

環境基本法(一九九三年)の制定以降、河川法、海岸法、港湾法、漁港法と、水辺を管轄する個別法が次々と改正され、環境重視と市民参加が謳われた。自然再生推進法を、新たな公共事業をつくるものと揶揄する者もいるが、私はこれら個別法に実行段階で横串を通すものと解釈している。

同法は、住民やNPO法人等の地域の多様な主体が参加して、湿原、干潟、藻場等の自然環境を保全し、再生し、維持管理することが「自然再生」であると定義する。ごもっともだが、果たして海の現場でこれが実現するのは何年先になることかと考えてしまう。

川においては、地域住民等が改修事業等に立案段階から参画したり、維持管理を任されたりする事例が既にみられるが、海辺は相変わらず固く行政の手の中に抱え込まれたままである。

法改正の時もそうだった。一九九七年の河川法改正時には現場から騒然たる論議が沸き起こったものだったが、続く海岸法や港湾法での海の現場のシラケ具合は対照的であった。きっと、市民参加の歴史の浅さ、市民側の当事者意識の低さや底辺の狭さに根ざすものなのだろう。

横浜の海辺の市民活動は全国で最も先進的と評価されているが、実際にこの1年で、自然再生推進法に基づき何かが起こったという話は聞かれなかった。だが、現実が法律に追いついていないなどとは言っていられない。我々が先陣を切らなければ誰がやるのだ。法律は誕生と同時に劣化を始め、賞味期限は意外にも短いものなのだから。

海をつくる会 工藤孝浩

横浜では、漁業者も海の自然再生の主役になるだろう。
今、横浜市漁協柴漁業研究会は藻場造成の実験に取り組んでいる

(金沢区ベイサイドマリーナ沖にて、 筆者撮影)