ハマの海づくり 24

平潟湾の再生

 

 東京湾を親にたとえれば、野島海岸がある金沢湾は子にあたり、金沢湾に二本の水路を介してつながる平潟湾は孫にあたるだろう。

この様に湾が三重に入り組む地形は全国でも珍しく、海と陸とが織りなす美しい景観は、江戸時代以来多くの人々を惹きつけた。平潟湾は、景勝「金沢八景」の中心的な存在であった。

しかし、新田開発に始まる相次ぐ埋立てによって湾の九割が失われ、残された水域も生活・工場廃水によって汚されきってしまったため、平潟湾から人々の心は離れてしまった。

その後、地道な下水道整備と大規模な浚渫と野島水路の開削という外科療法が功を奏し、水中の生き物と水辺の人の賑わいが急速に戻ってきた。特に魚の回復ぶりは、横浜市環境保全局の20年以上にわたる調査で証明されており、数年前に県水産総合研究所が行った調査でも、アユ、スズキ、クロダイ、シロギス、ヒラメ・カレイ類などの水産上重要な魚が育つ「ゆりかご」であることが分かった。

東京湾の子宮ともいえる平潟湾の豊かさの秘密は、四本もの河川の流入と干潟の存在にある。淡水と海水が混じる汽水域にある干潟は、最も高い生産力を誇る生態系のひとつである。

過度とも思われた浚渫を免れて平潟湾に残った干潟はわずかだが、そこでは毎年多種多様な稚魚が育ち、東京湾へと巣立っているのである。もし、干潟の面積を少しでも増やすことができれば、水産資源の増大に寄与し、平潟湾の水質浄化にも貢献するだろう。

現在、平潟湾は均一に水深3.5mに掘り下げられており、プレジャーボートや遊漁船の泊地として利用されている。干潟を造成するには、船舶の航行と湾の水交換を妨げない場所を慎重に選ばなければならない。

干潟造成の最有力候補地は、流入河川の六浦川である。六浦川は、国道16号線との間にある長さ約500mの直走する2面張りの水路だ。埋め残されたかつての平潟湾の一部で、川というよりも湾の細長い湾入部なのである。

ここを干潟化すれば、多くの稚魚たちの育成と浄化の場として機能するだろう。外科療法によって蘇りつつある平潟湾のさらなる再生のためには、今一度手を施す必要がある。

海をつくる会 工藤孝浩

夕照橋の下にある平潟湾最大の干潟は、        
驚くほど多くの生物がすむオアシスである。(筆者撮影)