2001年10月24日(水)城ヶ島報告


   「愛情を込めて1500粒」

                        

参加者:木村さん、工藤さん、坂本事務局長、諏訪部さん、反田

 朝10時に神奈川県水産総合研究所の駐車場に集合ということで、私は9時半ごろに到着。時を同じくして坂本さんも到着しました。すでに、木村さんは海藻の着床を試験する資材を用意しておりました。じきに諏訪部さんも到着。木村さん(と工藤さん)を除き、仕事を休んでの参加でしたので、ちょっと後ろめたい感じながらも、私を含め3人とも仕事を忘れて海に潜れるという開放感が顔にでておりました。研究所の前の海にはサザエの稚貝を育成する大型のイケスがあり、器材を背負ってそのイケスまで細い木の橋を渡り、何とエントリーはイケスの端から。こんなエントリーは初めてです。「エントリーするイカダ、右下に見える板を渡っていく

 生憎、曇っていたためか、水中は若干暗く感じましたが、透視度は数mあり私にとっては充分。イケスが魚礁となっているようで魚影が濃く、各自、思い思いの方向にあっという間に散ってしまいました。水深は概ね4〜6m位で、底には堆積物のトッピングが若干ありますが、砂利混じりでしっかりしておりました。あちこちにテッポウエビがつくったと思われる穴があり、スジハゼが見張りをしていました。また、捨石や岩盤が剥き出しとなっているところには、結構、カジメが生えていて、メバル、メジナ、ウミタナゴ(野島のとは違いギンタナゴのようでした)、各種のベラなど根回りを生活の場とする魚が多く、また、太っている個体が多い印象を受け、「餌が豊富なのかな」という気がしました。実は、私が相模湾を潜るのは7〜8年ぶりのことで、ホームグラウンドとしてきた駿河湾側の大瀬崎ではまず見られないスイという名のアナハゼとかカジカに近い魚を見て興奮しまくり状態でした。「体格の良いメバル「スイを見たのは初めて」

 30分を過ぎる辺りから寒さが身にこたえてきましたが、何とか耐えていると、後ろから工藤さんがいつの間にか来ていて、こっちへ行こうとサインを出しています。何気なくついて行こうとすると、いきなり全速力?で泳ぎ出し、それから延々と10分以上もあっちへ行ったりこっちへ来たりという感じで忙しなく泳ぎまくっていました。何も分からずについて行くと、急に上がろうということになり、近くのテトラポッドからエキジットして終わりました。「寒さに震えている私の体を温めるために泳ぎまくっているに違いない」と、水中にいるときは勝手に良い方に解釈しておりましたが、実は研究所の前の海にはいろんなタイプの魚礁が沈めてあり、どうも、魚礁の状態を確認するためにあちこちと回っただけのようです。私にとって、イケスからのエントリーも初めてなら、テトラからのエキジットも初めてと、初めてづくしのダイビングでした。

 「早く終わって時間ができたなぁ」と思っていると、研究所の敷地内にある池で、もう一度ダイビングするという話になっています。アマモの苗を育成するための苗床を池に沈めてあったのですが、これを池から揚げる作業をすることになり、3人とも器材を背負いなおして池に潜りました。実際に作業したのは坂本さんと諏訪部さんで、私は水中から見学していただけでしたが、この池が面白い。「池といえば鯉」と相場が決まっていますが、この池は当然海水で、鯉の代わりに鯛がうようよ。こんなにも鯛がいるなんて、って感じ。「今日のお土産は活きの良い鯛かな」、なんて期待してしまったほど。

 このあと器材を片付け、使ったタンクにエアを充填している間に、坂本さんの車に同乗して(坂本さん、運転だけでなく橋の通行料も出して頂いて、ありがとうございました)、本土?に渡って寿司屋に入り、坂本さんと私は『鮪のすきみ丼大盛り+茶碗蒸+吸い物付き=840円』をいただきました。これが結構、美味しかったんですよ。清水、焼津と並んで「三崎港は遠洋鮪の水揚港なんだなぁ」、と舌で実感してしまいました。食事中はくつろいだ雰囲気の中で、坂本さんの人間業とは思えないインストラクターへの修行の話とか、真鶴の髪の長い美人霊?の話とか、水中に沈んだ集落を訪ねた話とか、普段は絶対聞けない話を聞くことができました。海会の人は普通のダイバーではないのかな、という匂いがしていたのですが、やっぱり、「皆さん、スゴイ人ばかり!」というのに漸く気付いたところです。自分はごくフツーのファンダイバーということが改めて実感でき、嬉しく思っているところです。

 和んだ雰囲気のまま、研究所に戻ると、工藤さんが本当にすまなそうに手伝って欲しいことがあるというので、勇んで(?)研究所の一室に行ったら、何と、お願いされたのは米粒より小さいアマモの種の仕分け作業でした。この種は、木村さんと工藤さんが、野島と走水で5月に採集したもので、木村さんと諏訪部さんが野島分を担当、坂本さんと私が走水分を担当し、野島分は種が少なかったので、野島組は後に走水組に合流しました。選別はピンセットで一粒一粒つまんでは、良品、不良品と仕分けするジミな作業です。芽のでない種は柔かく、芽のでる種は硬いのですが、発芽寸前の種は微妙に柔かく、この仕分けが大変でした。最初は話し声もあったのですが、皆さん真剣モードに入ってからは、坂本さんが計数カウンターをカチカチさせる音だけが、妙に響いておりました。良品を500粒選別した時は、「まだまだ先がある」という焦燥感、1000粒で「漸くここまで来たか」という達成感、そして1500粒に到達したときは「もうだめ」という脱力感でした。坂本さんの選別がとても速く、意外(失礼!)に器用なためか、決断力があるためか、余裕で1500粒選別しておりました。3時前に始めて、終わったのは5時過ぎ、外に出たらもう真っ暗でした。選別していない残りを含める1万粒近くあるかもしれません。木村さんによると発芽率は35%程度とのこと。愛情込めて選別したので、発芽率は40%位になったらいいなぁ、と思っているところです。選別に参加した皆さんも気持ちは同じと思いますが、これだけ苦労したのだから、大きく育って欲しいと願ってやみません。春になって野島に植えるときは是非、参加したいと思います。

観察した魚種は以下の通りです。アカエイ、ゴンズイ、メバル、ヨロイメバル、アナハゼ、スイ、コスジイシモチ、オオスジイシモチ、キンセンイシモチ、ヨメヒメジ、コバンヒメジ、クロダイ、クロホシフエダイ、メジナ、カゴカキダイ、スズメダイ、ソラスズメダイ、ウミタナゴ、キュウセン、ホンベラ、オハグロベラ、ヒブダイ、ニジギンポ、ヨメゴチ(?)、ニシキハゼ、サビハゼ、ホシノハゼ、クツワハゼ、スジハゼ、アミメハギ、キタマクラ
「写真では判りにくいがヨロイメバルも太っていた」「ホシノハゼも大きい」


潜行開始:10時42分、浮上:11時35分、潜水時間:53分、水深:最大5.4m、平均3.5m、水温:最低19.1℃、平均19.2℃、天候:曇のち時々晴れ、風:なし

                              目次に戻る