2001年12月1日(土)泥抜きダイビング報告


   「ジャー、ジャー、ジャー」

                        

参加者:伊東会長、安田さん、反田

 泥抜きとは、海会では普段、砂泥底の東京湾(横浜・野島沖)を潜っているため、伊豆など綺麗な海を潜り、「泥を抜く」ダイビングのことを言うようです。私は野島沖でも綺麗だと思っているのですが…。この日は、超ご親切な安田さんに私の自宅近くまでピックアップに来ていただきました。6時待ち合わせで、辺りはまだ暗かったのですが、12月というのに息が白くもなく、前週の野島定点観察に続き、静かな、そして暖かな朝でした。現地に着く前にコンビニで朝食を買い込み、川奈にはスケジュール通り8時半前に到着、伊東さんも着いたばかりでした。ショップで書類にいろいろと書き込みましたが、Cカードを出したのは数年振り、「リュックのポケットに入っていて本当に良かった」と安堵した次第でした。

 ショップから車で1分ほど戻ったところに川奈港があり、川奈は最近(4、5年前らしい)オープンしたばかりとのことで、港には温水シャワー、冷水シャワー、温水風呂、カメラ用洗い場、器材洗い場、器材干し場など、ダイビング用の設備が充実!ビーチのエントリーポイントも歩いて1分もかからない目の前、と条件が揃っておりました。ビーチのエントリーポイントは港の堤防からで、足場はコンクリートで固められ、両側にロープが渡してあり、そのロープが水中まで続き、ロープを伝わって行くだけでそのままエントリーできてしまう「至れり尽くせり」状態です。しかもタンクは事前にエントリーポイントまで運んであり、そこまでは自分の器材を持って行くだけ。器材をセッティングすれば、大して歩くことなく、もう水中という感じで、体力のない女性でも全然OKというポイントです。タンクはアルミの9リットルなので、非常に軽いのも助かります。「体力に自信が無いのでビーチは嫌い」という方、ここは本当にお勧めですよ。

 ところで、今回は3人ともDUIのドライ。全員がDUIなんて、非常に珍しく、「やっぱ海会だぁ」って感じでした。海に入った辺りは水深3〜4mで岩場なのですが、その先には岩場に囲まれた砂場があり、その砂場が途切れながらもずぅぅぅぅぅーっと続くという感じで、岩場が好きな人も砂地が好きな人も、どちらも楽しめます。砂は白く、かなり大粒です。秋口のもっと水温が高い時期でしたら、ジョーフィッシュ(アゴアマダイの仲間)が見られるような粒をしています(西伊豆の大瀬崎にも1ヵ所だけ粒の粗い砂地がありジョーフィッシュが出現します、他人から秘密裏に聞いたので場所は言えないのですが)。私は迷わず砂地の観察に入りました。すると、コブヌメリがこちらを覗っています。早速、パチリと撮影。砂が白いため、ここのコブヌメリは体色がかなり白く、こんなに白いコブヌメリを見るのは初めてです。

 喜んでいると、次々と面白いものが出てきます。少し行くと、伊豆のガーデンイールであるアキアナゴらしい個体がいます。近づくと、案の定、引っ込んでしまいました。ところがそれはアキアナゴではなく、何とタコだったのです。今年5月にNHKの『地球・ふしぎ大自然』で放映された「バリ島七変化の海・なぞの変身ダコを探せ」のミミックオクトパス(擬態ダコ)を連想させるタコでした。ミミックオクトパスはウミヘビ、カレイ、イソギンチャクなど、変身する生物はゆうに10種類を越えるという、これまでの常識を覆すタコです。日本にも似たようなタコがいるという噂が一部にはあったのですが…。自分の乏しいダイビング経験の中ではこれまで出遭ったことがありません。今回は余りにも不用意に近づき過ぎました。当のタコは目だけは穴から出していたので、証拠写真だけでもと思い、一応撮りました。このタコの正体が何だったかは次回の楽しみにしましょう。

 水温が17℃と未だに高く、南の海からやってきた魚たち(いわゆる死滅回遊魚)も健在です。キスジキュウセン(変換キーを押したら「キス持久戦」と出てしまいました、気持ちいいけど息苦しい?おっと失礼!)が砂地でホンベラ若魚など他のベラ科魚類と混成チームを組んで泳いでいます。砂地と岩場の境目を、何とテングチョウチョウウオが餌をついばんでいます。しかも体色パターンは幼魚ではなく、もう成魚になっています。この日の夜、忘年会の宿で神奈川県水産総合研究所の研究者でもある工藤さんにその写真を見せたら(デジカメはすぐに見られ便利になったなぁ、という感じです)、相当悔しがっており、かなりのレア物です(フィリピンでは普通種ですが沖縄でも数が少ないようです)。

 ということで夢中になりすぎ、インストラクターでもある安田さんにはご迷惑をお掛けしてしまいました(改めて安田さん御免なさぁーい)。私はマイペースで写真を撮っていましたが、一方の安田さんはドライが大水没!寒さを我慢しながら水中での安全管理をやって頂いたのに…。浅場の砂地から岩場を乗り越えて北側に行くとドロップオフ状態になっており、下は水深18m前後で平らな砂地となります。ここはやはり白い砂なのですが粒が非常に細かいのが特徴です。なっ、なっ、何と、ここは「きょ、きょ、共生ハゼの天国!」。寒さと怒り(?)で震える安田さんを横目にちょっとだけ観察。そこらじゅうにテッポウエビの巣穴があり、ダテハゼ主体にオニハゼがいて、探せば他にもきっと…という感じでゾクゾク、ワクワク。ネジリンボウも4尾いるらしいです。でも、もう帰らなければならず、「ここも次回の楽しみにしよっと」と心の中でつぶやいて引き上げました。

 2本目はボート(例によって漁船)です。ここでは現地スタッフがガイド。舷側が切ってあり、そこからジャイアントでエントリーすると、水面から水深20mの底が良く見えます。この時期は透明度が非常に良いのですが、その中でも最高に近かったのではないでしょうか。砂地に根が点在し、ここでも砂地の生物と根回りの生物の両方が楽しめました。濃い赤色のカミソリウオ・ペア、アンカーロープの影に隠れていて逃げないハリセンボンのペア(?)など。根の上ではササノハベラのペアが1mほど急上昇して産卵しておりました。このシーンの撮影だけはビデオでないと無理ですね。

 ボートに上がる際には、現地のガイドがフィンを脱がしてくれるのですが、ちょっとくすぐったいというか、なんか××されているというか、妙な気持ちでした。そういえば、ガイド付きで潜ったのは何年ぶりか分からないほど昔だったような…。でもフィンを脱がしてくれるところは滅多にないはず。やはり女性ダイバーに優しいポイントと言えるのではないでしょうか。

 ここでも安田さんのドライが大水没。排気バルブからがひどく、チャックからも若干没っています。左手首のシールを開けると、水がジャーと流れ落ちます。2回目もジャー、3回目もジャー、そのあとはタラタラだったのですが、それを見ているうちに港に着いてしまうほどポイントが近い!陸に上がり安田さんがドライを脱いでインナースーツを絞ると、またまたジャー…という状況でした。安田さんには散々な一日でしたが、そこは超明るい性格で乗り切っておられました。

 2本潜ったあとで、2時半から遅い昼食をとりました。車で1分のところに東伊豆音痴な私は良く知らないけど味噌汁で超有名な店に入り(店名、失念しました)、伊東さんは握り+カニ汁、安田さんは散らし+魚の団子汁、私は刺身定食+魚のアラ汁。味噌汁のお椀がものすごく大きくてビックリ。味も申し分なくとても満足な昼ごはんとなりました。食べる時間が遅かったにもかかわらず、基本的に味噌汁でお腹一杯となったため、忘年会が始まる時間にちょうど空腹となる絶妙な量とタイミングでした。その忘年会では…、おっと、ここから先はオフレコ、オフレコ!

 ちなみにダイビングフィーは、今回のパターンである1ビーチ(ガイドなし)、1ボート(ガイド付き)で12,100円。お土産に鯵の干物が付きました。2ビーチ(ガイドなし)では5,500円とのこと。来年はみんなで泥抜きしませんか。

〔1本目〕潜行開始9時31分、浮上10時31分、潜水時間60分、最大水深18.3m、平均水深7.6m、最低水温16.8℃、平均水温17.1℃
〔2本目〕潜行開始12時23分、浮上13時06分、潜水時間43分(うち5m安全停止3分)、最大水深20.8m、平均水深17.8m、最低水温17.4℃、平均水温17.4℃
天候:晴れ、凪

 今回観察した魚種は以下の通り。ウツボ、キビナゴ、ゴンズイ・幼魚の群れ、ホシノエソ、オグロエソ、マダラエソ、カミソリウオ、アオヤガラ、カサゴ、メバル、イソカサゴ、アナハゼ、オビアナハゼ、キンギョハナダイ、コスジイシモチ、オオスジイシモチ、クロホシイシモチ、ハマフエフキ、イトフエフキ、ヨコシマクロダイ、コバンヒメジ、ヨメヒメジ、インドヒメジ、ウミヒゴイ、アカヒメジ、オジサン、ツマグロハタンポ、ミナミハタンポ(たぶん)、コブダイ・幼魚(成魚もいたようでガイドが指差したのですが遠くて見えませんでした)、スズメダイ、ミツボシクロスズメダイ、クマノミ・ペア、ソラスズメダイ、オヤビッチャ、テングチョウチョウウオ・若魚、ミゾレチョウチョウウオ、シラコダイ、キンチャクダイ、メジナ、タカノハダイ、ユウダチタカノハ、イラ、ニシキベラ、ホンソメワケベラ、オハグロベラ、イトベラ、ホンベラ、カミナリベラ、ホシササノハベラ、アカササノハベラ(たぶん)、キスジキュウセン、キュウセン、イトヒキベラ、ブダイ、コウライトラギス、ニジギンポ、コブヌメリ、イチモンジハゼ、ガラスハゼ、オオガラスハゼ、サビハゼ、クツワハゼ、ダテハゼ、オニハゼ、ハナハゼ、クロユリハゼ・ペア、オグロクロユリハゼ、ヒメユリハゼ、ツノダシ、ニセカンランハギ、サザナミハギ(たぶん)、ヒメテングハギ、ヒラメ、カワハギ、ヨソギ、ハコフグ、ミナミハコフグ、ウミスズメ、ハリセンボン、キタマクラ、ほかに伊東さんはマツカサウオを撮影、イサキ・幼魚も見たとか

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