2002年2月16日(土)2月の野島定点観察報告


「1年後の楽しみ」

                        

参加者:伊東会長、諏訪部さん、荒井さん(陸上班)、河内さん(朝のみ)、辻さん(昼から)、反田

 私には全く身に覚えがないのですが、日頃の行いが良いのでしょうか(?)、前日までのこの冬一番の寒波が去って「春近し」を感じる暖かい朝でした。今回もまた、自転車で来ることになりました。自転車こいでダイビングに行く人って、まずいないですよね。環境負荷の最も少ないエコマークのダイバーと言えるでしょう(自画自賛!)。でも、出る前にバタバタしていて、夕照橋に着いた時にはすでに集合時間の9時を過ぎ、またまた10分近く遅刻してしまいました。すでに河内さんが事前に作成した当日分のアマモ観察野帳を持って独り待っておりました。お忙しいのに待たせてしまいました(河内さん御免なさい、でも寒くなくて良かったですね)。そのあと、すぐに皆さんが集まりました。

 暫くの間、荒井さんと水中写真談義。荒井さんは今年還暦とのことで、水深60mで記念写真なんて話も前週の城ヶ島では出ていまして、それは危険すぎるから単位をmからフィートに替えて60フィートにするとかで周りの人は盛り上がっていたのですが(私には60mまで潜るという発想はないなぁ)、最終的に荒井さんが出した結論は60歳の1年間に撮った水中写真で記念アルバムを作りたいとのことでした。最近はデジタル処理で比較的安く自費出版できるそうです。私も「節目の年には自分の本が出せればいいなぁ」と思います。羨ましい限りです。私は還暦まであと10数年、それまで荒井さんのように健康にダイビングを続けられたら、とも思いました。どんな本ができるか1年後が楽しみです。

 荒井さんは前回1月の野島定点観察で採集した海藻の標本(押し花)を自宅で作成、今回、一部をお持ちになり見せていただくことができました。A6判くらいのちょっと大き目のものから、しおり程度の小さいものまで沢山ありました。素晴らしい技術です。2月23日の「夢ワカメ・ワークショップ」で子ども達に海藻押し花の作り方を教えるそうです。私にはアオサくらいしか種類が判らなかったのですが、野島の海藻にも色々あって面白そうです。実を言うと、海藻についても勉強したいという思いが前回の城ヶ島でアラメの話を聞いて以来、頭をもたげています。

 今回は矢板側のアマモ観察用の巻尺がないため、諏訪部さんの持っていたロープを使って急ごしらえのメジャーを作ることにしました。1m毎に結び目を付ける案もあったのですが、使用後に解けなくなってしまう恐れがあったので、荒井さんの持っていたマジックで印をつけることにしました。海会の人ってドラえもんのポッケでも持っているような人が多いですよね。「何かが無い」というと、必ず誰かが何とかしてくれます。何も出てこない私は傍らでいつも感心して見ています。

 そうこうしているうちに全員が器材のセッティングを終え、浜まで出発。駐車場から浜までは結構な距離があり、ウエイトを12kg着けてフルセットを背負っている私には、ちょっとキツイ道のりです。浜につくと棒岩の手前の水路でアサリ採りの人が2人、腰まで海に浸かっています。「あっ、まずい!」心の中で叫んでしまいました。そこはニクハゼの棲家なのです。今回はニクハゼをばっちり撮ろうと思って、いつものデジカメのほかに銀板フィルムのスチールカメラを用意、二刀流でバシッバシッと撮ろうと気合いを入れてきたのに。

 海岸に着くと、諏訪部さんが「アカウミガメの死骸だ」と叫んでいます。「東京湾の湾奥にも海亀が来るのか」と思ったら、「アカミミガメ(通称ミドリガメ)」の聞き間違いでした。正確にはミシシッピーアカミミガメだそうです。波打ち際に置いてあるように死んでいました。まだ死んだばかりのようで、死臭も全くありません。侍従川沿いに棲息していて死んでから流されてきたのでしょう。ちょっと前に暖かな日が続いた時があり、その時に冬眠から覚めて地表に出てきたものの、その後の冷え込みで凍死してしまったのでしょうか。亀の世界も外来種が幅を利かせているようです。矢板側のアマモ調査を終えたあと、荒井さんが地中に埋めました。1年後には骨格だけになっていると思います。掘りかえすのが楽しみです。

 潮が引き始めていたので(最干潮は昼過ぎ)、私は水中を歩いて行きましたが、伊東さんと諏訪部さんは何と、水深50cmも無いところから泳ぎ出しました。「根性あるなぁ」。根性無しの私は棒岩の手前まで歩き、そこで潜行すると、BCDとドライのエアを抜いて息も吐ききっているのに、なかなか潜行しません。インナースーツを着込み過ぎました。腰を冷やさないように、女房の見ていたカタログ本に出ていたネオプレーン地のスパッツを履いたのが響いたようです。でも、これで寒さ対策はばっちりです。

 無理矢理、潜行してアマモ場に行きました。水面下50cm辺りまで濁っています。工藤さんの話では赤潮とのことです。いわゆる春濁りの出始めです。少しでも太陽光を浴びようと水面近くに植物プランクトンが凝縮しているのでしょうか。肝心のアマモは、今回は伊東さんが水中で野帳に記録し、私は自分なりにアマモを観察することにしました。アマモの葉に藻がかなりついて少し重そうです。砂地には前回の1月に見た小さい芽がいくつかありました。しかし、その近くにはアマモの大きな株があり、地下茎が延びて生えてもので、種から芽が出たアマモの赤ちゃんではありませんでした。そこで自分をアマモの苗の探索モードに切替え、アマモの株のないところで赤ちゃんアマモを探すことにしました。そして、ついに見付けました。少なくとも周囲3mにはアマモの株がありません。間違いなくアマモの赤ちゃんです。今回は定規を持ち込んで一緒に撮影。このまま根付いて、何年か後には大きな株に生長してくれれば、と願ってやみません。

 そして、いよいよニクハゼの撮影です。棒岩を回って水路側に出ると数匹、ホバリングしていました。中の1尾は婚姻色が出て黒ずんでいます。しかし、近寄るとスゥーッと逃げてしまいました。その先にはタイヤが沈んでいて、その周りには数匹、互いに距離を置いてホバリングしています。でも婚姻色の出ている個体はなく、求愛行動を観察するにはちょっと早かったようです。今度は慎重に近づき漸く撮影できました。ただ、デジカメではブレてしまって無理のようで、フィルムで撮影。ファインダーを通して観察していると、巣穴の周辺20〜30cmには縄張りがあるようで、他の個体がそこに入ってくると追い払う行動が見られました。また、浮遊しているプランクトンか何かを食べているようで、時折、ついばむ行動が見られました。水深は1.2m、立てば頭が出る深さでした。アサリ採りの濁りが若干ありましたが、陽射しがあって水がキラキラと美しく、テレビで見た柿田川を潜っているような気分でした。途中、大きなアメフラシがいたのですが、伊豆でみるのと顔つきが違うようです。後で知ったのですが、どうもアマクサアメフラシという種類のようでした。エキジットすると、すでに伊東さん、諏訪部さんとも揚がっていました。今回だけはいつもと逆になりました。

 その後、伊東さんがFM放送に携帯で「生出演」、海の様子を伝えていました。今度は矢板側に移動してアマモの観察です。途中、カモが数羽、番いで泳いでいました。確か、アオサを食べてくれる何とかガモ(種名を失念)です。矢板側では僅か3人での作業でしたが、潮が引いてアマモの観察がし易く、例のロープが役立ちました。これまで、まともに観察したことがなかった私は、沢山のアマモの群落をみて驚きました。矢板側も結構、茂っていたのですね。これまで何も知らずに作業をただ手伝っていただけの自分を少し反省、次回からは自分の目でも良く見ておこうと思いました。作業中に矢板に牡蠣がついていたので、3個ばかり失敬(牡蠣さん、御免なさい)。帰りにノリヒビから流れていた海苔も拾って家で食べてみました。牡蠣は殻ごと焼いたのですが身がプリッとしていてとても美味しく、海苔は網に干して焼いて食べました。海苔特有の香りがしてなかなかです。佃煮にしてもよさそうです。荒井さんのお話ではそのまま味噌汁に入れても美味しいとのこと。来年は色々と試してみようと思います。これも1年後の楽しみです。

 荒井さんは先に帰られ、昼食は男衆3人でいつもの出前。木村(喜)さんオススメのルースー焼きそばです。ご飯ものと違って、そこそこ食べられそうなボリュームなのが安心できます。味はもう満点!食べ始めると、辻先生がスーツ+ネクタイ+コート姿で登場。大船で仕事をしたついでに寄ったとのことでした。午後2時過ぎに解散しました。今回はインナースーツをちゃんと着替えて帰りました。

 潜行開始:10時32分、浮上:11時21分、潜水時間49分間、水深:最大1.5m、平均1.2m、水温:最低7.3℃、平均8.4℃、天候:快晴
 今回観察した魚種:ネズッポ科の1種(トビヌメリ?)、ニクハゼ、スジハゼ、ヒメハゼ、アシシロハゼ、クサフグ

                              目次に戻る