2002年10月5日(土)野島定点観察報告

+金沢水の日準備報告
         


「おさかなくん登場」

                        

参加者:おさかなくん(特別ゲスト)、坂本事務局長+渚ちゃん、村石さん、
      荒井さん、木村(尚)さん+お子様、工藤さん+鮎美ちゃん+お友達、
      安田さん、諏訪部さん、河内さん、伊東(めぐみ)さん、高橋さんご夫妻、
      田島さん(中央大)、石渡さん(同)、反田

 この日、ついに実現したのです。それは、あの『TVチャンピオン』の
魚通選手権で見事5連覇を成し遂げた「おさかなくん」こと宮澤正之さん
が海会のイベントに登場したのです。おさかなくんの師匠が工藤さんであ
ることから、坂本さんの提案により工藤さんを通じて声を掛けたら、二つ
返事で来ていただけることになったようです。この話が決まった時から私
はおさかなくんに会えることを楽しみにしていました。そして、これまで
撮った水中写真を見てもらおうと、3日前から密かに写真を520枚ほど用意
していたのでした。

 ワクワクしながらいつもの様に研修センターの裏に行くと、これまでの
定例観察とは違って、すごく賑やかなんです。というのも、翌日の『金沢
水の日』のイベントの準備もあり、応援の人が集まってくれたからなので
す。「これだけ人数がいるんだから、今日の定例観察は楽勝!」とこの時
は呑気に構えていました。この日、坂本さんが用意してくれたタンクは10
本、潜水班希望者は11人とのことで、誰かがあぶれることになっており、
私はのんびり潮干狩りしてもいいつもりで来ました。肝心のおさかなくん
はまだ来ておりません。どうしたのでしょう。『笑っていいとも』などに
も出演して、相当忙しい身なので起きられないのかも…などと思いなが
ら、タンクを譲り合っていると、もう一人予定していた人が出席できない
とのことでタンクは全員に行き渡りました(ということで潮干狩りは断念
しました)。

 この日の潮汐は新月の大潮で、干潮が10時過ぎのため、いつもと順序を
入れ替えて、矢板側のアマモ調査を先行、ボ岩側を後回しにしました。木
村さんが巻尺を2本用意してくれたので、X軸、Y軸とも距離を正確に測
れることになりました。しかも人手が多いので、10mに1人、観察専用要
員を配置できるという豪華プランとなりました。私は観察野帳付けを担
当、X軸である矢板側の巻尺押さえ(距離計測)を高橋奥様と村石さん、
Y軸の巻尺押さえを木村さんと私が担当しました。ところが、新しいアマ
モとコアマモの株が根付いて株の数自体が増えていることに加え観察する
眼が多いだけに、どんどんと報告があがります。記録するこちらはてんて
こ舞い。野帳の書き込み欄が足りずに、裏返して書き込む始末。それで
も、まだ足りずに野帳という制限要因によって調査終了となりました。そ
れだけアマモとコアマモが増えていることで喜ばしいことではあるのです
が…、矢板の調査に1時間近くも費やしてしまいました(調査時間の最長
不倒だ!)。

 矢板の長さは岸から157mで、50m地点、100m地点、150m地点には黄
色いペンキを塗って目印にしてあります(そのペンキは現在、ほとんど見
えなくなっています)。矢板の先端から10mごとに巻尺を当てて来たので
すが、巻尺で計った50m地点の上には、付着生物の隙間からかすかに黄色
いペンキの痕が見えました。「以前計った印と今回の計測の結果がこんな
にピッタリと一致するなんて感動もんだ!」と感激してしまいました(で
も一致しなかったらえらいことですが…)。それと、もうひとつ気になる
ことがありました。数日前に台風21号が野島の真上を通過したためか、コ
アマモが抜けて浮いているのを、かなり見掛けました。以前、矢板側を調
査した時に拾ったアマモの根(地下茎)はかすかに甘い味がしたので、コ
アマモでも確かめたくなって、抜けていた地下茎をかじってみたのです
が、期待は見事に裏切られました。甘味どころか苦い感じがしました。コ
アマモは甘くないのでしょうか。

 11時を過ぎて漸くボ岩側の調査です。今回も私が野帳を付けることのな
りました。9月に較べ水中は透明度が増して良く見え(といっても3m先く
らいまでですが)、観察は楽勝と思われたのですが、メッシュ・ロープが
見当たりません。台風21号のウネリで砂が巻き上がり、埋まってしまった
ようです。ロープを掘り出しながらの調査となり、掘り出すたびに砂が舞
い上がって濁ってしまい、ここでも時間を浪費してしまいました。それ
と、春に植えた苗は非常に元気でしたが、私が名付けた「尚ちゃん」苗は
砂が削られ根元が砂から出ていました。根は確りと張っているようでした
ので問題ないと思いますが、浅場の植物は台風の波浪という障害をも乗り
越えなければいけないのですね。

 ナイトダイビング用にエアを残しておく必用があったので、野帳付けを
終えてすぐに戻ることにしました。鋤簾対策用のブロックを越えたところ
にアマモがあり、そこに何とヨウジウオがついていました。腹には卵を抱
えており、オスに違いありません。しかし、卵を預けたメスは、近くには
見当たりませんでした。翌日の地曳網でもヨウジウオがかなり入っていた
ので、野島では再生産して脈々と子孫を残しているのでしょう。早速、撮
影。ヨウジウオをやっと撮ることができ満足です。帰る途中、もう1尾、
見つけることができましたが、時間とエアがないのでこちらはパス。この
ほか、アマクサアメフラシが一杯いて、卵もありました。そのうちの1匹
は緑色の糞をしていたので、アオサを食べているに違いありません。アマ
クサアメフラシ=ワカメ食、アメフラシ=アオサ食…という仮説が崩れた
瞬間でもありました。ここで疑問。アマクサは同一系群で年間2サイクル
(春に産卵、成長してと秋に産卵、成長して春に産卵)しているのか、ま
たは春生まれと秋生まれは別系群(年間1サイクル)なのでしょうか。そ
ういえば春の個体は色が濃く、秋のは薄く、秋の個体を初めて見た時はア
マクサに見えませんでした。食物の違いかもしれませんが…。

 いつもの中華屋さんの出前で昼食をとったあと、中央大学の田島さんと
石渡さんと私の3人で、急いで金沢区役所に出向き、『金沢水の日』の手
伝いです。3人とも相当振り回されたのですが、学生さん2人は愚痴ひとつ
言わず、本当に一所懸命やってくれました。こういう若い人が海会に入っ
てくれるといいなぁ、って感じで見ていました。野島に帰ってくると、1
オクターブ高い声が聞こえてきます。待望の「おさかなくん」でした。子
ども達に絵入りのサインをしているところでした。この日は潜れることを
知らずにノンビリと出向いたとのことで、木村さんの器材を借りて午後に
潜って大興奮だったようです。彼は冗談での切り返しが速く、頭の回転の
速い人だな、というのが第一印象でした。サインが終わると翌日の『水の
日』のために用意した水槽の前で、魚のスケッチです。さすが本職とあっ
て、とても上手で素敵な絵です。ところが、ここでも子ども達のサイン攻
めに遭ってしまいました。

 夕方からは、おさかなくんを含めてナイトダイビングです。ちょっと脱
線すると、ナイトダイビングと呼ぶのは私のような一般ダイバーだけで、
海会の半数を占める(?)潜水夫は「夜潜り(よもぐり)」と言います。
目的は『水の日』展示用の生物採集です。工藤さん、諏訪部さんの漁師コ
ンビは泳ぐ魚を担当。私はカレイなど平物を担当、残りの人は甲殻類を担
当。水中に入ると、夜光虫が美しく光ります。私は昼と夜のどちらを選び
ますかという問いには、すかさず夜と答えるナイト大好き人間です。で
も、こんなに夜光虫が多い海は初めてです。採集用の手網を動かすと、網
の軌跡が美しく蛍光色に輝き、流星群の中にいるようで、とても感動的で
す。

 水中に入ると、イボガザミがいたので手づかみでゲット。その直ぐ先に
は砂の中にマゴチの子どもがいて輪郭だけが砂から浮き出ています。網を
被せて砂から追い立てて簡単にゲット。順調です。しかし、採集ビンに入
れる際に、先に入れたイボガザミに逃げられてしまいました。鋤簾除けブ
ロックまで来ると、朝と同じところに卵持ちヨウジウオがいました。朝か
ら全く同じ場所にいたのでした。浮上して慎重にビンに入れました。再度
潜行して、すぐに寝ているクサフグをゲット、再び浮上してビンに入れま
したが、このままでは手間ばかりかかって効率が上がりません。そこで、
ビンに入れることを諦め、手づかみで捕まえて、手網を袋代わりにして入
れることにしました。カニ数匹とイイダコを獲り、そして今度は巨大ガザ
ミです。獲ったまではいいのですが、ハサミが手網に絡みついて奥に入り
ません。結局、ハサミ1本だけ残して泳ぎ去ってしまいました。

 沖に行くと、眼が愛くるしいフトミゾエビ、体側の白点が美しいシロギ
スの幼魚、型の良いアイナメもいたのですが、手づかみでは無理でした。
沖の泥地の辺りでは、強大な生き物(私です)に驚いて、海蛍が発光液を
水中に撒きます。泥の中から青白い美しい光りがジワっと出てくる感じで
す。こんな素敵な光景に出会えるのもナイトならでは…です。それと、砂
地の浅場では、あちこちで二枚貝がカタツムリのように、足と2本の水管
を出して一所懸命に這って移動しています。近づいて良くみると、何とア
サリでした。自分の棲んでいる場所が気に入らなくて場所替えをしている
ようです(勝手な想像ですが)。昼間は移動している姿を見たことがない
ので、敵に襲われないよう夜間に移動しているのではないでしょうか。ア
サリ君にとっても「隣の芝生は青い」のですね。

 ナイトもあって遅くなりましたが、夜はバーベキューで宴会です。坂本
シェフに安田シェフも駆けつけて、美味しくいただきました。その場を借
りて、おさかなくんに私の写真をみていただきました。彼の魚の知識は相
当なものです。名前を当てるはもちろん、生態から和名や英名の由来ま
で、本当に知識が豊富です。魚をとことん愛しているって感じです。そし
て、何よりもその人柄が最高です。こんなに優しい人は滅多にいないはず
です。彼に出会う機会に恵まれ、良かったと思います。10月20日の山下公
園海底清掃にも参加していただけるとのことで、できれば、その後も海会
のイベントに参加していただければと思います。

 観察した魚種は以下の通りです(ナイトのみはN)。
ヨウジウオ、コチ=マゴチ幼魚(N)、メバル、アイナメ(N)、シロギ
ス幼魚(N)、クロサギ幼魚(N)、ウミタナゴ、ニジギンポ、ネズッポ
科の1種(種不明)、ニクハゼ、スジハゼ、ヒメハゼ、カワハギ、アミメ
ハギ、クサフグ成魚、クサフグ幼魚(N)

〔1本目〕潜行開始: 11時33分、浮上:12時21分、潜水時間:48分、
      水深:最大1.4m、平均1.1m、水温:最低22.2℃、平均22.3℃、
〔2本目(ナイト)〕潜行開始: 18時39分、浮上:19時28分、潜水時間:45分、
      水深:最大2.8m、平均1.7m、水温:最低21.9℃、平均22.0℃、
 天 候:晴れ、風:なし

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