2003年1月18日(土)野島定点観察報告 


「亀の甲より海苔の香」

                        

参加者:伊東会長ご夫妻、坂本事務局長、荒井さん、木村(尚)さん、
     工藤さん、諏訪部さん、相原さん、角石さん、安齋さん、高橋(正)さん、
     滑川さん(新人)、反田

 この冬はこれまでの暖冬傾向とは一変、横浜・金沢区でも厳冬で庭には
霜柱がみられる日もあったくらいですが、この日は痛いような寒さはな
く、逆に生暖かい気がするほど朝の冷え込みが緩く、サイクリング日和と
言える日でした。しかし、自転車の空気入れが壊れ、我が自転車は使え
ず、女房に送ってもらっての参加です。

 昨年は真冬になると参加メンバーが減ってしまったのですが、今回は研
修センターの裏が人と器材で埋まるほどの盛況ぶり。野島の定点観察も軌
道に乗っています。何と、今回は珍しく円陣を組んで木村さんのブリー
フィングでスタートです。これまでは、例えば器材をセッティングしなが
ら「今日、どうします」「じゃあ、これこれこうね」って感じで、ツー
カーというか阿吽の呼吸というか・・・そんな感じだったんですけど。人
が多い分、やはり意思の疎通が大事ということなんですね。潜水班は二手
に分かれて野島組は10時からボ岩側の生物調査、その後、矢板側に移って
最干潮である11時半を目途に矢板のアマモ調査となりました。そしてもう
一組は早川丸さんらに船を2ハイ出していただき、人口海浜である海の公
園沖のアマモ調査です。私は野島組となりました。

 ボ岩側のアマモ調査は1m×1mのメッシュ・ロープが張ってあり、その
各メッシュ内のアマモを調査してきましたが、一応の成果を得ましたので
前回12月の定点観察の際にメッシュ・ロープを撤去しました(と言って
も、私は子どもがダウンして看病などで参加できませんでした)。今回は
メッシュもないのでフリーの観察と思いきや、坂本さんがアマモの観察野
帳を取り出して無情にも「メッシュがなくても観察できるでしょ」と言っ
ています。最初は冗談かと思ったら、目が笑ってなくて本気のようです。
仕方なく私が引き受けることにしました。

 海岸に着くと、沖には早川丸さんがもう来ていました。海の公園組とは
ここでお別れ。野島組は早速エントリーです。相原さんが「小さいアカエ
イがいますよ、逃げないよ」と言っていたので、早速、潜行開始!と、こ
こまではカッコ良かった(自画自賛)のですが、このあとが大変! 手首
から急に冷たくなってきました。間違いなくドライスーツの水没です。2
呼吸もすると、もう肘の辺りまで冷たくなってしまいました。アカエイは
逃げずにいたので、冷たいのを我慢しながらデジカメの電源スイッチを入
れると、今度はモニターが点きません。もともとスイッチの接触が悪かっ
たのですが、これまでは何回かオン・オフを繰り返せば使えたんですけど
・・・、今回は結局撮影を諦めざるを得ませんでした。ますます、左手が冷
たく感じられてきました。水温は10℃を切っているのは確実で、たぶん
7〜8℃です。水温をみようとダイバーズ・ウォッチに目をやると、電池切
れで水温どころか水深も計測してくれません。今年の初ダイブだったので
すが、いきなりの三重苦です。

 ドライスーツが水没状態でのダイビングは長くて30分が限度と思い、急
いでアマモ観察地点に向かいました。ところが急ぎすぎてたことと、まだ
カメラのスイッチが諦められずオン・オフを繰り返しながら泳いでいたら
観察地点を迂回する格好で通過してしまったようで、ふと見ると人口海草
であるマリロンが視界に入ってきました。確かマリロンはアマモ観察地点
の沖側だったはず。「しまった、行き過ぎた」と思って引き返すと秋に築
いた鋤簾除けの石垣がやっと見えてきて「あぁ、良かった」。真冬の一番
透明度が高い時期だったので透視度は数mもあります。こんなに先が見え
るなんて最高↑ でも左腕は感覚が麻痺しかけて最低↓。

 メッシュ・ロープがないので、目分量で野帳を付けました。野帳を付け
ている間、ちょっと気になったのですが、アマモの丈が短いような気がし
てなりませんでした。昨冬に潜った時はアマモの丈が急に伸びて感動した
ことを、つい昨日のように覚えていたのですが、今回はどう見ても短い。
葉の先は苔状の海藻に覆われていて古い部分に違いありませんが、下側は
苔状の海藻の付着がなくアマモの葉の緑が眩しいくらい新しい感じです。
この眩しい緑からすると確実に生長はしているのだろうけど、やっぱり短
い気がします。いろいろ考えて、@今冬は降雨が多く昨冬より透明度が悪
かったことから生長遅れとなった、A夏から秋に大発生したアオサに栄養
をとられた(あるいは光合成を邪魔された)、B年齢、寒さ、寝不足ある
いは長年酒精に脳みそを侵されたせいで私の単なる勘違い・・・の3点に
原因を絞り込んでみました。そのうちに思考がまとまらなくなってきたの
で、さっさとエキジットしてしまいした。この3点の中に正解はあるので
しょうか?

 エキジット後、一旦、センターまで戻ってダイビング器材を置いて、陸
上班と合流しました。伊東さんはFMブルー湘南の生放送に携帯電話で出
演、見てきたばかりの水中の様子を伝えたようです。坂本さん、相原さ
ん、安齋さんに反田の4人は矢板の調査に出掛けました。その途中で、昨
年2月16日の定点観察の時に見付けたアカミミガメ(ミドリガメ)の死骸
を荒井さんが埋めたのを思い出して、そろそろ1年経つので掘り返すこと
にしました。荒井さんの手が動くたびに何かワクワクします。頭の中では
真っ白い標本のような骨格のイメージが出来上がっています。ところが、
出てきた甲羅はもろく、直ぐにバラバラになってしまい、しかも色はカメ
そのものって感じ。荒井さんの話では、土中の水分が多すぎるのではない
かとのこと。まあ、ちょっとガッカリですが、カメさんの冥福を祈りつつ
荒井さんに埋め戻していただきました。

 そして矢板側に移動です。大潮の最干潮なのに潮はほとんど引いていな
い感じです。この季節は太陽が低い一方、月は真上を通り、太陽と月の軌
道がズレていることから、大潮でもあまり引きません。特に今回は満月の
大潮なのでなおさらです。太陽と月がダブる新月の大潮に較べると引きが
弱いのです。海に入って沖に向かうと直ぐに胸辺りまで水がきてしまいま
した。矢板の先端は岸から157mあり、155m地点から観測を開始。これま
で私は計測メジャーの押さえを担当してきましたが、今回初めてアマモの
観察を担当しました。

 水中に顔を浸けると、所々にアマモの群落が見えます。根がむき出しに
なっている株もあったのですが、ほとんどは確り根付いています。しか
も、場所によっては数m×数mの大群落にまで成長している株もあり驚き
です。でも、ここでも手首からどんどん水が入ってきて、リキが入りませ
ん。途中から海の公園組が加わってくれて助かりました。岸まで調査する
と、岸近くにはもっと大きい大群落がありました。昨年6月に種採りに
行った走水のアマモ場を連想させるような立派なアマモ場といえます。夏
前に見た時は小さな群落が点在するだけだったのに。僅か半年で群落同士
がくっついたのでしょう。このままいけば、もう台風が来ても流されない
でしょう。

 アマモ観察が終わり、漸くフリーになりました。実はこの時間を待って
いたのでした。海苔ヒビから流れ出た海苔拾いの時間です。寒いのを堪え
ながらも、帰るついでに海苔を拾いながら帰りました。岩には、岩海苔
(違うかも知れませんが食べられました)もあり、「やったぁ!」って感
じです。でもお昼の出前が届いているとのことで、海苔拾いを中断して食
事することにしました。私はルースー焼きそば。食べようとドライを脱い
でビックリ。手首とつま先から入った海水が全身に回ってパンツまでびっ
しょりでした。着替え終わって食べる頃には、他のメンバーはすでに食べ
終わっており、しかも焼きそばは冷えてしまいました。楽しみにしていた
のにちょっと残念です。

 食事のあと、坂本さん、安齋さんと3人で海に行き海苔拾いの再開で
す。私はびしょぬれのドライをもう一度着る元気がなく、ドライを着ての
海苔拾いは止めました。帰りは安齋さんに送っていただきました(安齋さ
ん、ありがとうございました)。早速、海苔は家で佃煮にしてみました。
醤油を入れすぎて、ちょっと辛くなってしまいましたが大満足です。漂っ
ている海苔はいずれ海水に溶けて消えてしまい、栄養塩は海中で循環して
しまいます。微々たるものではありますが、海苔を拾うことによって栄養
塩を海の外に出し、東京湾の富栄養化を食い止めるのに役立ったと思う
と、海苔の味と香りも増してくるから不思議です。

 観察した魚種は以下の通りです。
アカエイ、ネズッポ科の1種(種類不明)、ヒメハゼ、クサフグ、ほかに
相原さんは大きなマゴチを見たとのこと。

潜行開始:10時15分、浮上:10時45分、潜水時間:30分、水深・水温不明
天候:曇、風:なし→北西風

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