2003年8月23日(土)
ジャスコ共済・海の自然観察教室報告


「寿司ネタからの脱却

参加者:伊東会長ご夫妻、坂本事務局長、深沢さん、川嶋さん、高橋さんご夫妻、脇田さん、反田

先週まではセミも木にとまっていられないほどの冷夏だったのですが、こ
の日は朝から真夏状態です。朝9時に集合して、子どもたちが来るまで
ちょっと間があり、アットホームな雰囲気に包まれておりました。が、私
だけは気が重かったのでした。これまで過去4回の観察会ではただ野島の
海に連れて行って干潟の生物を見せてお昼にバーベキューをして終わるだ
けだったため、今回は坂本さんの発案で子どもたちに画用紙を渡し自分の
似顔絵を中央に書かせ、その周りに「見たいもの」「どう感じたか」など
4項目を書かせ、また、それとは別に見た生き物の絵と名前をグループの
リーダーに書かせて昼食後に発表してもらうことになりました。まとめ役
の私には荷が重すぎる感じでしたが、何とか頑張ってみることにしまし
た。直前の参加リストには載ってなかった「海辺の達人」でもある高橋さ
んご夫妻が参加してくださり、ホッとしました。

そして10時過ぎにいよいよ、子どもたちがジャスコの方に先導されてやっ
てきました。昨年も参加して見覚えのある顔も何人かいました。子どもた
ちは受付で画用紙を受け取り、それぞれがしゃがんで記入しています。今
回はすべて小学生で、坂本さんと「子どもたちの粒が揃っているじゃん」
などと話し、適当に班分けしても問題なさそうに感じました。それなら
と、思い思いの場所にしゃがみこんで画用紙に書き込んでいる子どもたち
を10人ずつ勝手に区切って3グループに分けました。これに海会ジュニア
が1グループとなり、全部で4グループが出来上がりました。前回の昨年は
グループ分けで苦労したのですが、今回はグループ分けがすんなりいきま
した。

私は最初に区切ったグループを担当することになりました。脇田さんも加
わっていただき心強く、助かりました。しかし、グループの各自が画用紙
に書いた年齢と学年を見て、ちょっと青くなってしまいました。確かに粒
が揃ってはいたのですが、10人のうち3年生が僅かに2人、あとの8人は1年
生と2年生だけだったのです。最近の子は栄養が良くて成長が早いせい
か、書かれた学年を見るまで低学年ばかりだとは全く気が付きませんでし
た。そして、心の中で思わず叫んでしまいました「これはまとめるのが大
変だ!」

とりあえずは自己紹介からです。いきなり子どもに振ってはかわいそうな
ので、私から始めました。「ケンジ」と呼んでねというと「ケン爺」とか
茶化す声が出て、いい雰囲気になってきています。やはり低学年のノリで
す。ひとりひとり私が横について「野島で何が見たいかな」などと聞いて
いくと「タイ!」。せっかくの子どもの気持ちを否定してしまうのは気が
引けたので「タイはいるかもね、見られるといいねぇ」。そして次は何と
「マグロ!」。否定しないように「マグロはいるかな? いればいい
ねぇ」なんだか寿司ネタばかりになってきました。子どもが日頃、接する
海の生き物って寿司ネタぐらいしかないんですかねぇ? 野島や海の公
園、シーパラダイスなどが近くにある金沢区民でもこんなもんなんでしょ
うか? 海会の一員として身近な海の素晴らしさを知ってもらうよう頑張
らねばって気がしてきました。

この日は最高気温が33度か34度の予想で冷夏に慣れきっている体には大変
堪えます。子どもたちの脱水症状や熱中症が心配され、ジャスコの方も
「特に水分補給をさせてください」とおっしゃっていましたので「喉が渇
いたら飲むのではなく、喉が渇く前にこまめに飲もうね」と言って、子ど
もたちが持ってきた水筒で水分を摂らせることにしました。しかし、1年
生の男の子だけ、どうしても飲もうとしません。理由を聞いたら母親が
「30分たつまで飲んじゃだめよ」と言ったようで、けなげにも我慢してい
たのでした。目には薄っすらと涙を浮かべています。母親としてオシッコ
が心配の余りの言葉がけだったのでしょうが、かわいそうです。そこで時
計を見る振りをして「あっ、今ちょうど30分たったよ。もう飲んでいいん
だよ」と言って飲ませてあげました。ふぅ〜。

次が大変です。発表するリーダーを決めなければいけません。3年生は静
かな女の子が2人だけ。最初は3年生にやってもらおうと思いました。で
も、自主性を尊重したかったので子どもたちに聞いてみました。「誰かや
りたい人?」。円く座っている子どもたちの顔を見ながら聞いたら、2年
生の女の子と目があいました。私の顔が懇願していたのかもしれません
が、見えない人に背中を押されるようにその子が「やります」と言ってく
れました。「ありがとう、いっしょに頑張ろうね」と励ましながらリー
ダーをお願いすることにしました。幼さの残る2年生の彼女が3年生の女の
子よりも頼もしく見えてきました。

それと班の名前も決める必要があります。この班の子どもたちに配った名
札の色が黄色だったので、黄色いものが連想できる名前にしてもらうこと
にしました。というのは、幼稚園児に毛の生えた感じの幼い1〜2年生主体
の班なので、子どもたちが他の班のメンバーと区別しやすいようにする必
要があると考えたためです。ここでも、子どもたちの自主性を重んじて、
子どもたちに名前を考えさせました。「名札が黄色いので、黄色いものの
名前を班の名前にしようね」というと、何人かは積極的にハイッ、ハイッ
と元気良く手を上げますが、消極的な子もいます。バナナ、グレープフ
ルーツ、ひまわりなどの名前が挙がり、多数決でひまわりにしました。と
ころが多数決を理解していない子が多く(当然ですかね)、納得いかない
顔をしている子もいて、自分の中では来年の課題です。

リーダーも決まり、班の名前も決まり、漸く生物観察に行く準備が出来ま
した。他の「イルカ班」「カニ班」と海会ジュニアを合わせ、全員に注意
点など簡単に説明して、出発です。昨年は、荷物をバーベキュー場の青
シートの上に置かせたのですが、いざ観察という時に「忘れ物した」とい
う子が何人も出て荷物を取りに行ってしまうという混乱があったので、今
回、幼子中心のひまわり班は荷物を持たせたまま、水路に行きました。と
ころが、これが裏目に出てしまいました。さあ、始めようという時に1年
生の男の子が「お腹が痛い」と言い出してしまったのです。脇田さんにそ
の子の面倒をみていただきました。あとで気付いたのですが、その子の荷
物だけ水路の横に忘れてしまったのでした(盗む人がいなくて、そのまま
放置されていたのは幸いでした)。

この日は潮回りが悪く、水路もほとんど冠水して足の踏み場がほとんどな
い状態でしたが、子どもたちを水路に降ろして、観察のスタートです。と
ころが、わが班の3年生の女の子2人は降りようとしません。運動靴が汚れ
るからいやだと言うのです。「サンダルか何か、持ってきてる?」と聞く
と頷きます。「じゃあ、サンダルに履き替えようよ」と言うと「サンダル
が汚れる」と言うので、「汚れても洗えばバーベキューを食べている間に
乾くから大丈夫だよ、お母さんも怒らないと思うよ」と説得して何とか水
路に降ろしたのですが、結局、2人は泥のないコンクリートの縁の上だけ
にいたのでした。何だかなぁ。

この一方でほとんどの子どもはカニやヤドカリを見付けて大喜びです。恐
る恐るカニに触る子。泥の中からゴカイを掘り出して気味悪がる子、ヤド
カリを手の上にのせてはしゃぐ子、いろいろです。水路の次は、子どもた
ちを葦原に連れていき、説明を試みました。ワープロで「あし」と打って
も「よし」と打っても「葦」の字に変換するので、どちらが正しいのか良
く分っていない自分に気付きました。とりあえずアシとかヨシとか呼ばれ
る植物で河口近くに生えていて水の浄化に役立っているが、野島では最
近、減っているとの説明をしました。葦をアシとすると「悪し」につなが
るため、「良し」につながるヨシと呼ぶようになったみたいです。昨年に
続き、葦の説明はうまく行きませんでした。私にとって鬼門です。

そして、そのあと松並木を通ってカニ干潟に行きました。前浜でも良かっ
たのですが、この日の夜には海の公園で花火大会があり、屋根のある東屋
は残念ながら先客が陣取っていたため日陰が確保できなかったので、カニ
干潟だけで終わりにするつもりでした。すでに潮が上がってきていて、干
潟はほとんどないのですが、子どもたちは喜んで水に入っていきます。こ
こにはバカガイやシオフキ、そしてアサリの稚貝がいて、子どもたちも満
足しているようでした。カニ団子も少しだけ残っていたのですが、団子に
気が付いた時には子どもたちがすでにハイ状態になって散り散りになって
いて、「カニ団子があるよ、集まって」と声を張り上げたのですが、半分
は無視状態で一部の子どもにしか説明できませんでした。そのうちに潮が
満ちてきたことと、船の曳き波が押し寄せたため、団子もカニの穴も消え
てしまいました。

ここでもくだんの3年生2人は海に入るどころか砂地にさえ下りずコンク
リートの上から見ているだけです。「さっきは泥だったけど、今度は砂地
だから汚れないよ」と言っても聞き入れません。そして「先生、セミ捕ま
えに行ってもいい?」と言う始末。こちらもブチ切れる寸前でしたが、
ぐっと堪えて「今日は海に来たのだからセミは別の日にしてね」と言いま
した。凄い顔をして言ったかもしれません。預けた親としては半日でも子
育てから開放され、しかも昼食まで出してくれ楽なのでしょうが、預かる
こちらとしては海に全く興味を示さない子には困りものです。昨年もそう
いう子がいました(もしかすると同じ子だったかもしれません)。来年は
そういう子にも、海とそこに暮らす生き物を見る(見付ける)楽しさを味
わってもらおうと思います。それには確りした対策が必要ですね。妙案な
いかなぁ。

子どもたちは依然としてハイだったのですが、時間が来ました。深沢さん
が12時を回ったことを教えてくれました。本来は私がタイムキーパーもし
なければならないのですが、手が回りませんでした。渋る子どもたちを海
からあげて、松林の木陰で簡単に生き物の説明をしました。ただ、バカガ
イとシオフキの稚貝を一緒くたにしてしまい、途中それに気付いてちょっ
と落ち込みました。海会ジュニアが稚魚を捕まえており、まだ2cmにも満
たないため、種類が非常に判りづらいのですが(判る方がむしろ少ない
?)、子どもたちは名前を聞きたがります。頭頂部が扁平だったので、ト
ウゴロウイワシの仲間かボラの稚魚だと思いますが、ボラにしては体高が
低く、オールクリーンの際の地曳網でもトウゴロウイワシの仲間の親が網
に数尾入っており、その親が産卵して孵った稚魚の可能性もあります。と
りあえず「頭が平らなのでトウゴロウイワシだと思うよ」と言ったら「僕
もそう思う」という子がいてビックリしたりホッとしたり・・・。

このあと、バーベキュー場まで戻って、使った道具と手足を洗ってから、
今日の感想を各自の画用紙に書いてもらい、そしてちょっと心配な発表会
です。他の3つの班は大きい子が発表したのですが、わがひまわり班は2年
生の女の子です。こちらの心配をよそに彼女は「私の見た生き物は、ヤド
カリと・・・」と立派に説明してくれたのです。この子にお願いして本当
に良かったと思いました。親御さんが発表している姿を見たら涙を流すん
じゃないかなって感じです。発表した子どもたちにとってもいい経験に
なったのでは、と思います。このような経験をするか、しないかで子ども
の成長って段々と差がついていくんじゃないかな、って気がしました。私
も親として考えるところ大です。

そして待ちに待ったお昼ご飯です。今回も、ジャスコ特選の材料を使用し
た坂本シェフ特製のバーベキューとオニギリです。子どもたちは喜んで食
べ、お代りをする子もたくさんいました。お腹が痛いと言っていた子も元
気に食べていました。今回は潮回りの関係と5月の赤潮でアサリなどが絶
滅状態になったことから、子どもたちの欲求を満たせなかったようです。
でも、帰り際に「また、いてね。来年も来るから」と言って帰っていった
男の子がいて、何か救われた気がしました。それと、人なつっこい女の子
に抱きつかれたりで、少なくとも一部の子は大満足だったようでホッとし
ています。

高橋(真)さんから、子どもたち全員にスコップが行き渡らない(1班に2
個)ので、来年はペットボトルでスコップを作って子どもの数だけ揃えた
方が良いのでは、といった内容のご提案をいただきました。このような提
案は大変助かります。野島の定点観察の際にでも、500mlのペットボトル
を切ってみて、どんな形態にすれば切り口が安全で、しかも掘り易いのか
試してみようと考えております。

今回は自分の中で反省することばかりと感じています(具体的な話は避け
ますが・・・)。どこまで海の楽しさを伝えられたんだろうか、悩みま
す。実は観察教室のあと、3〜4日間はちょっと凹んでしまいました。確か
に子どもは扱いが大変ですが、それだけにちゃんとやれば遣り甲斐もある
はずです。ただ、子どもたちの人数に対して、大人が少な過ぎます。今
回、参加されている方は脇田さんのように遠くから参加されている方のい
らっしゃいますが、ほとんどは私を含め地元民ばかりです。8月という特
別な時期に遠方から来るのは大変なんでしょうけど、もっと海会メンバー
の参加があれば、子どもたちはより内容濃い体験ができると思いますし、
その子の理解度に合わせた個別の話ができるはずです。海会のメンバーの
多くは野島のスペシャリストなのですから(少なくとも子どもから見れ
ば)、来年からはもっと、もっと、もっと参加をお願いしま〜〜す。寿司
ネタしか思い浮かばなかった子どもが海に接し「生きている海」を見て
触って何か感じるはずです。こうした地道なイベントによって、その子た
ちが大人になる10年後、20年後、あるいはもっと先の東京湾再生につな
がって行くのではないでしょうか。

--------------------------------------------------------------------------------

                              目次に戻る