2003年10月11日(日) 金沢水の日 報告 


「ペットコップ」

参加者: 坂本 海会junior(坂本渚・坂本泉・大石晋弘・大石万紘・磯貝陸・
              磯貝岳・猪野祐斗・唐鎌美沙)
     諏訪部・諏訪部幸・高橋・高橋真琴・伊東・伊東めぐみ・川嶋・脇田・
     河内・村石・工藤・木村尚・反田・鈴木太郎・安田・家里・家里葵・阿部夫妻

     海洋大(旧東水大) 10名

                       

この日は「金沢水の日」です。海会の活動拠点のひとつである野島の海関
係の団体だけでなく、侍従川やトンボ関係の団体、野鳥の会など金沢区の
水に関する団体が協力しあって、海浜清掃、宝捜し、カヌー体験、天然の
塩作り、干潟観察など、合同でイベントを行なうもので、何と今回が記念
すべき10回目だったのです。ところが、1週間前に晴れとなっていた天気
予報が二転三転、直前の天気予報では、金沢区は10時過ぎまで雨が降る予
想となっており、水に関係するからと雨までも「水の日」を応援(?)し
かねない状況でした。濡れるのを覚悟して8時半に家を出ると、もうほと
んど止んでいる状態。助かりました。

研修センターに着くと、ロビー入り口横に海会の水槽がすでに設置されて
いました。その周りだけ子どもがたかっており、そこだけちょっと異様な
雰囲気です。子どもたちの顔をみると、何と身内である海会ジュニアたち
で、カニやアメフラシ、ヒトデなどを触ってはしゃいでいました。子ども
にとって、生き物を実際に触るということは、大きな喜びなのですね。最
近は、海の生き物だけでなく、虫や草花なども触る機会がどんどん減って
しまって、当世の子どもたちはちょっとかわいそうです。子どもたちのは
しゃいでいる姿を見ながら、ふと、そんなことを思いました。この一方
で、大人たちはぐったりの様子。私は今回、家庭の事情で参加できなかっ
たのですが、水の日前日の用意は非常に大変で、少ない人数で頑張ったと
いう空気がひしひしと伝わってきました(ちょっと胸が痛かったりし
て)。

水槽を見ると、ウミタナゴの立派な成魚、チンチン(アクセントに注意!
 クロダイの当歳魚のことですよぉ)、アイナメなどいつもの顔ぶれのほ
か、ピンギス(シロギスの当歳魚)やアカエイ(2枚)まで入っていまし
た。アカエイはナイトダイビングで高橋(正)さんが捕まえたそうです
が、尻尾の毒針のことを考えると「凄い!」の一言に尽きます。早川丸さ
んからも巨大マアナゴや種苗放流魚とみられるチンチン数尾の差し入れも
ありました。そのマアナゴは細めの女性の手首ほどの太さがあり(例えが
悪すぎですね)、こんなに大きいのを見たのは初めて。さらにゴンズイ玉
もあります。ほかにも、死滅回遊魚系ではアケボノチョウチョウウオがサ
イズ違いで3尾も! トゲチョウやハタタテダイ、青い輝きが美しいソラ
スズメダイまでいて、熱帯魚店のようです。それに、地味ですがタツノオ
トシゴの仲間のサンゴダツまでいました。この水槽は子どもだけでなく大
人にも大人気で、ほとんどの人が「えぇ、ここの海にいたんですかぁ? 
こんな綺麗な魚がいるんですねぇ」と感心してました。

10時の開会式の前後になると、雨も完全にあがり、人がどんどん集まって
きて早くも盛況です。水槽にはもう人だかりができています。ロビーの中
も人で一杯です。海会は高橋(正)さんがNHKから頂いたビデオテープ”
未来への航海”の一部を流しました。地球上の水、食料の量をクイズ形式
で子どもたちに分かり易いような構成になっていたようです。また、海会
がこれまで野島で行ってきたアマモの活動などを展示しました。外では
バーベキュー場の炉で恒例のワカメの味噌汁を作り、好評だったようで
す。

野島・前浜では海浜清掃の一環として地曳網による海中のゴミ拾いを行な
いますが、その際、混獲される魚などの生物を水槽に入れて観察会も同時
に行ないます。前回は私が稚拙な解説をしたのですが、今回は工藤さんが
やるものとばかり思い込んでいたら、工藤さんは野鳥の会の方とともに干
潟観察の方に回るそうで、諏訪部副会長に「反田さんの仕事ですよぉ〜」
と言われてしまいました。春に実施したオールクリーンの時はビニール袋
に魚を入れて子どもたちに回して、観察してもらったのですが、今回はお
役御免と思い込んでいたせいもあり、ビニール袋を持ってきていませんで
した。そこで、急きょ、観察用のケースを作ることにしました。

実は娘が飼っていたカブトムシが夏に産卵して、現在、2齢から3齢幼虫に
なってまして、飼育用の容器が不足しているため、前日の準備で2リット
ルのペットボトルを飲んだら空ボトルを下さいと事前にメールしておいた
ので、親切な方がペットボトルを集めておいてくださいました。それを観
察用の容器に流用することにしました。いただいたペットボトルはほとん
ど500mlだったので、小物の容器にはもってこいでした。ボトルの肩辺
りから口にかけての部分をカッターで切り離して、コップ状にして子ども
たちに回すことにしました。水漏れもチェックして10個ちかく用意しまし
た。ビニール袋より使えそうな感じです。次回からはペットコップを説明
に使うことにしましょうか。

ペットコップを持って前浜に行くと、ちょうど地曳網の準備と海浜清掃が
始まるところでした。まずは清掃に参加しました。今回はナチュラルコー
プヨコハマとの共同清掃です。このところ北風が吹いたせいか、浜にはゴ
ミがたくさん打ち上がっていました。見るからに汚い感じです。ほとんど
がビニール袋などのプラスティック系のゴミです。ゴミを拾い始めたら、
同コープの方とみられる女性2人からレジンペレットを集めたいとのお話
がありました。聞くと、野島を含めていろいろな海岸でレジンペットを
拾っているそうで、その中でも野島はダントツでペレットが多いとのこと
でした。周りが護岸されているので、やはり野島の砂浜に集まってしまう
のですね。ところが入れる容器がないとのことで、生物観察用のペット
コップを2個差し上げました。50cm四方だけで600個以上もペレットが取
れたそうです。1m四方では2,400個、以前、海会で調査した時と同じよう
な数字です。ぜんぜん減ってませんねぇ。

そうしているうちに、徐々に人が集まってきました。その中で、3歳まで
いっていないような小さな男の子を連れたパパが子どもと一緒にゴミを
拾っていました。「ゴミがあると、鳥や魚がご飯と間違えて、食べちゃう
んだって。かわいそうだよねぇ」と子どもに話し掛けながら一生懸命拾っ
ている親子の姿がとても印象的でした。私も家族を呼び出し、反田家全員
で参加しました。最終的に約80人が参加して30分ほどゴミ集めをした結
果、約1トンものゴミが集まりました。その結果、海岸は見違えるほど綺
麗になりました。目に見える成果があると、やはり嬉しいものですね。

地曳網はこれまで浜の中央部を漁場(?)にしてきたのですが、この日は
これまでと違って、石垣〜ボ岩のラインのキワを狙って仕掛けられまし
た。東水大改め海洋大の学生さん(東京水産大学の名前が消えてしまった
のはちょっと寂しい感じです)を指導した木村(尚)さんにあとで理由を
聞いたら「前日に潜った際に、そっちの方が魚が多かったから」というよ
うな返事。魚が多いところを狙うなんて「根っからの漁師だなぁ」と独り
で感心してました。ただ、そこにはゴンズイも沢山いたので、ゴンズイが
入ることだけが心配とのことでした。

子どもたちを中心に左右に分かれて網を曳いたのですが、今回は朝のうち
雨が降っていたためか、人数が少なかったようです。これに加え、網を速
く曳くと網が上滑りしてしまい網底のオモリである沈子が底から離れて、
魚が逃げてしまうため、木村さんが事前にゆっくり曳くよう子どもたちに
言い聞かせていたので、網が揚って来るのが非常に遅く感じられました。
人数減と意識してゆっくり曳いたこともあり、また、木村漁労長の狙いが
当たって、一発目から大漁でした。5月末の赤潮被害にもかかわらず、ハ
ゼがわんさか、ヨウジウオが2種類、クロウシノシタやアオヤガラの幼
魚、そしてイカまで獲れたのです。獲れないときは2回曳くケースもある
のですが、今回は全員一致で1回だけで終わりとすることにしました。

今回も子どもが網に押し寄せないようロープを張ってブロック。ゴンズイ
が1尾も入らなかったのは幸いでした。衣装ケースの水槽に入れて階段ま
で持っていき、いよいよ説明です。ちょうど工藤さんが干潟観察会を終え
て来ていましたので、説明をお願いしたところ「全部分りますよね。反田
さんがやってくださいね」との返事。工藤さんの前で説明するとは思って
もみませんでしたので、子どもたちに向かって「みなさん、こんにちは
!」と挨拶したあと、頭の中が一瞬真っ白になってしまいました。立ち直
るためには、まず得意なハゼから。ペットコップにヒメハゼ、もうひとつ
にアカオビシマハゼを入れて何とか説明。オゴノリとアオサがあったの
で、それをからめてヨウジウオに振り、最後にコトヒキを持ってきて、コ
トヒキは子どものときだけ塩の薄いところ(汽水域のことです)に来ると
話しました。そして、ペットボトルが子どもたちの中を回っている間に、
140kmの海岸線を持つ横浜市には自然海岸が野島の300mくらいしかな
く、こうした生き物が棲んでいる海をこれから、もっともっと大事にして
欲しいようなことを言って締めくくりました。

その後、魚を触らないという約束で、水槽を子どもたちに開放しました。
最初は喜んでたかっていたのですが、飽きてしまったようですぐに誰もい
なくなりました。前にも似たような経験をしましたが、子どもたちがいつ
までも離れないのは、やはり触ることのできるカニ、ヒトデ、アメフラシ
などの無脊椎系ですね。研修センターに戻って、網やロープ、水槽を洗っ
たあと、展示水槽に戻ると飽きもせずに子どもたちがカニなどを触ってい
ました。トゲアメフラシのうちの1尾はもう肌がボロボロです。未来の海
のために、ここは我慢してもらいましょう。水槽の中の生き物には気の毒
でしたが、10回目の水の日も無事終了しました。そして私は2リットルの
ペットボトル4個を持って帰ったのでした。幼虫2匹分のおうちになりまし
た。



--------------------------------------------------------------------------------

                              目次に戻る