2004年6月6日(日) 野島オールクリーンアップ報告 


「タッチはほどほどに」

 朝、久々に気持ちの良い目覚め。このところ、仕事がずっと忙しかった
ので、これだけぐっすり寝たのは久しぶりと思いつつ時計を見ると何と8
時半。いつもなら子どもに5時半に起こされるのに、久々の単身という身
軽が災いしたか。野島でオールクリーンナップがあるっていうのに、いく
ら近いからと言っても・・・ゲェーって感じ。そういえば、昨夜、『冬の
ソナタ』を観て寝るのが遅くなったツケが・・・。すでに20回分全部2サ
イクル観てストーリーも結末も知っているのに、もう一度観てしまうほど
ハマッてしまった自分が・・・@そこにいた、A恥ずかしい、B情けない
・・・さてどれでしょう? 冬ソナって、いわゆるオバサンだけじゃなく
て、私のようなオジサンが観ても面白いんですけど。別にヨン様やチェ・
ジウのファンではないんだけど、今の日本にはない純愛ドラマですよね。
忙しい時ほど、何かホッとするものを求めてしまうんですよね。そういえ
ば、海会では8月に韓国干潟ツアーに行くとのことで、一部では大変盛り
上がっており、「私も行きたい!」と叫びたいのですが、キントキナシで
は行けません(金と時間のない人をこう呼ぶらしい)。話がそれまくりな
ので、軌道修正すると、朝飯も食べずオレンジジュースだけ飲んで、雨の
中を自転車に乗って、いざ野島へ・・・。

 この日は朝から本格的な雨。梅雨前線が北上して本州にかかり、梅雨入
りが宣言されました。いきなり梅雨ど真ん中って感じです。この雨ではイ
ベントは中止だろうと思ってちょっと安心(?)していたら、研修セン
ターのホールの中で、タッチプールを行うとのこと。さすがは海会です。
雨程度では諦めるという事を知りません! タッチプールとは、海の生き
物を子どもたちが自由に触ることができる水槽展示のことです。海会のイ
ベントというと、このタッチプールは切り離せません。このタッチプール
という催しは優れものです。海の生き物は水という壁があって、図鑑や水
族館あるいは『地球不思議・大自然』のようなTV番組で見ることはでき
ても、なかなか手に触れることはできません。でもタッチプールだと、子
どもは海の生き物に実際に触れることで、海にもさまざまな生き物がいる
ことを体感できます。たぶん、大人になってもその記憶って残っているの
ではないでしょうか。そして、いずれは海の大切さに気付いてくれる・・
・と信じています。

 雨が降っていなければ、野島海岸のゴミ拾いをして、地曳網による海底
清掃とそれに混獲される魚介類を展示して、野島海岸の話や生き物の説明
をする予定でした。しかし、本格的な雨降りでゴミ拾いと地曳網は中止せ
ざるを得ませんでした。今回のタッチプールは安田さんが寄贈してくれた
装飾用(?)の細長いアクリルケースを2つ使用。これだと、横からも観
察できるし、細長いので大勢の子どもが周りを取り囲んで見ることが出来
ます。青いビニールシートを敷いて、タッチプールを直列に配置しまし
た。そこに海水を入れますが、それが大変なのです。特に私も含め、高齢
化が進んでいる海会メンバーにとっては・・・(40過ぎたら髪と腰は大事
にしなきゃね)。しかし、今回は若い助っ人が来てくれて、助かりまし
た。東水大改め海洋大の皆さんです。手際良く運んでくれて、準備万端!

 タッチプールはセンターの地下倉庫に仕舞ってあるのですが、倉庫に
行った坂本さんがアカテガニを捕まえてきました。倉庫の中に閉じ込めら
れていたそうです。アカテガニはいわゆる「森のカニ」で、普段は野島の
山の中に棲んでいますが、産卵だけは海でしなければなりません。そのア
カテガニはメスでしたが卵がなく、足も2本ほど少なくなっています。こ
のアカテガニを見て、海会メンバーがあれこれ推理しました。餌の無い倉
庫の中で、長い間、閉じ込められていたため、おそらく、卵は吸収してし
まい、タコのように足を食べて生き延びていたのではという結論になりま
した。通常、カニは胴体を持ち上げていますが、このカニは衰弱がひど
く、胴体を支えられずに尻餅をついた状態です。「これは大変!」と雨の
中、さっそく外で餌探し。だぶん、有機物だったら何でも食べるのでしょ
うが、元気を出すには蛋白質に限ると勝手に決め込んで、ナメクジ(梅雨
ですね!)を探してきました。でも、ナメクジって、以外に足が速いんで
すね。結局、食べなかったので、カニを野島山に放して自活してもらうこ
とにしました。あとは彼女の生命力が頼りです。

 前夜に海会の“漁師ダイバー”(SさんとかKさんのことです、誰だか
判りますよね)が生け捕りにしていた魚介類が生簀に入れられており、そ
れをタッチプールに移動。片方を魚専門プールに(業界的にはヒレ魚と呼
びます)、もう片方を魚介類の「介」の方、すなわち節足・軟体・棘皮動
物などの無脊椎動物を入れました。入れると同時に子ども達が目を輝かせ
ながら寄ってきて、さっそくタッチが始まります。最初は恐る恐る触って
いた子も、大丈夫と判るとだんだん大胆になってきます。魚は粘液がとれ
て死んでしまうので、魚を触らないと約束させて、カニやナマコなどを自
由に触らせました。ただ、ハサミが強くて危険なイシガニなどは、触れな
いように別容器(虫かご?)に移し見るだけにしました。子ども達は大喜
び。こういう経験が大事だと思います。ある子がナマコを持ち上げたら、
お尻から海水がピューと吹き出て大受け。すぐに他の子にも伝染して、だ
んだん過激になってきました。すべてのナマコが複数の子どもに何回も持
ち上げられ、水が出ないと握りつぶされそうになったりしてました。

 そんな中、10時過ぎから開会式です。タッチプールに入っている生き物
の解説をすることになっていましたが、今回は専門家の工藤さんが見えて
いたので、工藤さんにお願いして自分はサブに回ればいいかな、などと
思っていたのでした。ところが説明役として指名されたので、さっそくマ
イクを持って説明に入ったら、実は開会式中ということでスタッフの紹介
をしているところだったのでした。あぁ、早とちり。(血液型A型の人に
多いらしい行動?)。スタッフ全員の紹介が終わったところで、改めて説
明に入りました。まず、自分としては得意分野の魚から。野島の海は基本
的に砂地なのでコチ(マゴチ)。砂地に適応した平べったい体形が分かり
易い。クサフグを見せると何人かの男の子から「膨らませてぇ〜」の大合
唱。フグが膨らむのは良く知っているみたいで何かホッとしました。で
も、魚を触らないでと言った手前、いじくり回すのもなぁと思い、「かわ
いそうだから今回は止めておこうね」と言って水槽に戻しました。メバ
ル、ヨウジウオなど、野島の代表的な魚を説明してから、苦手な無脊椎
へ。ちょうどカニやエビが卵を抱えていたので、この時期はいろいろな生
き物が産卵する旨を説明しました。今、産んでおけば、水温が高く餌も豊
富な時期にぐんぐん成長できるからでしょうか、野島だけでなく温帯域で
は夏前に産卵する生き物が多いようです。生命の大イベント(と言うか、
これがないと生命は継続性を失ってしまう)である子孫の残すということ
に対しては、ほとんどの子どもが興味を示します。生命を持つ者の永遠の
テーマなんでしょうか(超大袈裟だ)。

 説明を一通り終えて、事前に配布していた冊子を基にして、工藤さんに
アマモの説明などの補足をしていただきました。説明を終えて、子ども達
に再び自由に触ってもらいました。ナマコ水鉄砲はさらに過激になりまし
た。ちょっと目に余ったので「ここの生き物はみんなと同じ命があるんだ
よ。あまりいじめないでね」というような声かけをしました。というの
は、先日、佐世保であった小学生の女子が友人をカッターで殺すという事
件に代表されるように、生命に対する子どもの感覚が昔と違ってきている
ような気がしたからです。異常な事件と同列には論じられないでしょうけ
ど、私も子を持つ親として、命の大切さを教えていかなければならないと
痛感しています。私が声をかけたくらいで、子どもの心まで届かないとは
思いますけど、生き物はオモチャとは違うということを何となくでも分っ
てくれたらなぁと思っています。この子が大人になったら、きっと命を大
切にする人になると信じております。ま、そんなこんなで、子ども達はみ
んな満足したようでした。タッチプールの終了とともに、クリーンナップ
も終了。全員で後片付けと掃除をして終わりました。

採集・観察した魚種(時間が経って記憶が定かではありません、あしから
ず):ゴンズイ、メバル、ヨロイメバル(モヨ)、アイナメ、アナハゼ、
ヨウジウオ、コチ(マゴチ)、シマイサキ、ネズッポの仲間、ウミタナゴ
幼魚、クサフグ

                      



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