ニカラグアより

2004 年6月17日 VOL.3

★はじめに

この国にきて早3ヶ月目、仕事を始めて一ヶ月の月日が流れました。生活にもずいぶん慣れ、手洗いの洗濯も上手になり(この国ではお金持ち以外洗濯機がありません)水道の水を飲んでもお腹を壊すこともなくなりました。言葉のほうはまだまだ未熟で、相手の言っていることがあまり理解できないことも多いのですが、珍しい日本人に興味を持ってくれる周りの人たちにお世話になりながら活動しています。この国にくるためにお世話になった多くの友人たちや力になっていただいた方々、そして、現職参加実現のために尽力してくださった逗子市の職員の方々に感謝しています。

★ニカラグア料理

アジア各地の料理やメキシコなどの料理が日本でも食べられるのにかかわらず、ニカラグア料理はまったく知られていません。しかし、中米はその人種の起源において、アジア大陸とつながっているためでしょうか、それほど日本やアジアの料理と遠いものには感じられません。主食は豆、米、とうもろこし。豆は日本のつぶあんのようにして食べますし(ただし甘くない)、米は長粒種で、バターピラフのようにして食べることが多いようです。とうもろこしの粉はあらゆるものに使われており、ピノル、ピノリージョと言われる粉から作った飲み物(コーンフレークを細かく砕いて水にといて飲んでいるような感じ。ピノルを飲むのでニカラグア人はピノレーロとも言われる)ナカタマルという粉を固めて蒸したもの、トルティージャという粉をこねてのばして焼いたピザの生地のようなもの(あらゆるものをはさんだり巻いたりして食べる)ガジョピントという典型的なニカラグア料理は、見た目はお赤飯で、小豆と米がまざっていますが、油でいためてあり、味も異なります。

そのほかにも鶏肉、豚肉、牛肉などは日本の味付けとは異なりますが、スパイスが効いていい感じ。そして特筆すべきはマンゴー、パパイヤなどの熱帯果物の美味しさと安さです。

★食習慣とごみ

この国で、びっくりするのは何から何までビニール袋に入っていることです。街角の物売りのおばあさんは果物を剥き、小さく食べやすい大きさにきり、それをビニール袋につめて並べる、お菓子も、食べ物も、それも調理された肉や野菜もビニール袋に入れてわたす、おそらくニカラグアにたこ焼きやお好み焼きの屋台があったらプラスチックの皿ではなくビニール袋に入れることでしょう。なぜなら、氷菓子やジュースでさえ、ビニール袋に入れるのです。ニカラグアでは缶ジュースより瓶の炭酸飲料やジュースが主流で、その場で飲むときは瓶のまま出てきて、瓶を店に返すのですが、持ち帰りたいときは、ビニール袋にあけ、瓶を先に回収するのです。それにストローを挿し、袋の口を縛り、まるで水の入った風船のような状態で飲みます。

日本ではごみを拾うイベントをすると空き缶が山ほど出てきますが、ここでごみといったらビニール袋が一番多いはずです。

★学校でのごみ調査

小学校の環境教育の授業は一週間に一回、連続二コマで、クラスの中での理論的な、理科のような授業と、クラスの外にでる実践授業で構成されています。実践の授業は学校菜園をつくったり、植樹したり、ごみ拾いをしたりというのが主に行われます。しかしごみ拾いをするのは大切なこととはいえ、ただ箒で掃いて捨てるのではそれは掃除であって環境教育ではないと考え、ごみの調査を提案しました。つまり、集めたごみを種類ごとに分別して数を数え、記録する、それによって学校のごみはどんなものが多いのか、どのくらいあるのか、減らすにはどうしたらいいのかを考えてみようというものです。その結果は、やはりビニール袋、ストロー、紙(子供たちがノートを引きちぎってまるめて捨てている)、果物の種(食べたそばから投げ捨てるため)が大量にあり、30分掃除しただけで数百の数のごみが集まる始末。次の日にまた別のクラスで行ってもまた同じだけ集まる。いかにごみを投げ捨てているかがよく分かることとなりました。先生が授業で「ごみを捨ててはいけません!」といえば「はーい」と答え、「汚染を防ぐにはどうしたらいいでしょう」と問えば「ごみを捨てないことです」と答える生徒たちの心まで環境教育が届いていないのだなあと考えさせられます。環境教育は種まきと言われます。たくさん種をまくと、そのうちいくつかが大きくなり、実るかもしれない、100人を教育し、大人になってそれを覚えているのは1人か2人か、だれもいないかもしれない。環境問題の解決の一手段と言われる教育ですが、一手段というより補助手段なのではないのか、ごみだらけのこの国を見ているともっと即効性のある対策が必要なのではないのかと思わざるをえません。

★ある日本人女性

コスタリカ国境に近い街、サンファンデルスル近辺にある海岸で過ごしていたある週末、日焼けしていない白い肌に黒い髪の東洋人顔の若い女性が日本人かそれとも中国系のアメリカ人かなあと気になっていると、彼女もこちらの視線に気づいて「日本人ですか?」と声をかけてくれました。「旅行ですか?」「私たちはここに住んでるんです。青年海外協力隊というボランティアで」彼女は、アメリカ人と結婚し、今、アメリカの住んでいるとのことでした。彼女の夫はニカラグア出身で、子供のころ、アメリカに父親と移住し、アメリカ人として育ち、軍人になったそうです。そして、日本の米軍基地に配属になったときに出会った彼女と結婚、ニカラグアに残っている母親を訪ねて、旅行中でした。彼女は外国に住みなれている人だったけれど、ニカラグアの印象を問うと、「大変でたまらない!」とのこと。シャツをめくり背中を見せて、「何かの虫にやられてぶつぶつになった!」(おそらくダニ)そして、連れてきた4歳の子供は何か(おそらく水)にあたって、嘔吐、下痢を繰り返し、病院に連れて行ってやっと良くなってきたところだとか。ともかく、ステイしている家の衛生状態が悪いらしく、トイレに行くのにも勇気がいる!らしい。彼女いわく、「子供がいない気楽なときなら、物価も安いし、楽しいかもしれないけれど、今はだめ。」私たち協力隊員は、衛生上問題のあるほどの家ではないところにステイさせてもらっているので、彼女ほどのダメージはないし、慣れてしまったので、水ではあたらないけれど、彼女のカルチャーショックぶりには久しぶりに普通の感覚の日本人を見たという気がしました。

訓練中から予備知識をたくさんつめこみ、ある程度の覚悟をしてきた私たちとは違い、夫の実家があったという理由で、たまたまやってきた彼女には、先進国との違いが大変なショックの様子でした。彼女の姑にあたるニカラグア人は、自分の4歳の子供と同じくらいの子供をたくさん持っているが(ニカラグアの人口の50パーセントは20歳以下、子供が多く、皆子沢山で、父親不在の家族も多い)その子供たちの世話をしているのかしていないのか、ふらっと出かけることが多く、食事の支度も適当、、、に日本人の彼女には見え、彼女が缶詰をあけようとしたら缶きりがなかったので、「なぜ、お酒を飲む金があるのに、缶きりがないのか!」と彼女には感じるようです。しかし、おそらく、生活のペースと感覚がニカラグア人の姑と日本人の彼女ではかなり違うのだと思います。彼女の夫の生い立ちは典型的なニカラグア人です。この国は、1990年まで続いた内戦の影響で、働き盛りの男性が内戦で死んだり、国外(アメリカなど)に出てしまい、その数が極端に少なく、残された女性と子供の数が多い国です。

いろいろなおしゃべりをした中で、彼女のステイする街リバスには看護士の協力隊員で、ジュンコという人がいて、病院に勤めているので、何か困ったらそこを訪ねるといいですよと伝えました。

後日、そのジュンコさんから伝わってきた話では、彼女は衛生状態が悪いのがきいたのか体調をくずし、入院、日本語が話せる看護士ということで、ジュンコさんがよばれ、世話をしたそうです。ニカラグアの印象は「もう二度と来たくない」になってしまったとのこと、残念ながら。

確かに衛生環境はよくない、何もなくて観光地化されていない国、しかし、それゆえにお膳立てされない旅が楽しめるかもしれません、ジュースに虫が入っているのもしょっちゅうですが。ご旅行をお考えの際はご一報くださいね。


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